J-REIT投資入門

「投資用語で、『ポートフォリオ』ってよく聞くけど、何のこと?」

 

いやいや、あなたは、さすがに、そこまで無知ではないでしょう。

 

投資の世界では、ポートフォリオとは、金融資産・金融商品の組み合わせのことです。投資を行う上では、いろいろな種類の資産・商品に分散投資していきますが、その内容(種類や比率など)のことです。

 

J-REITで、ポートフォリオと言うと、その投資法人が保有する不動産の種類や比率などの組み合わせのことです。

 

ここでは、複数の投資法人(銘柄)に分散投資することで、銘柄のポートフォリオを考えてみましょう。つまり、各銘柄の組み合わせを考えて見ましょうと言うことです。

 

複数の銘柄を組み合わせて保有することにより、結局は、統括的に、各投資法人が保有する不動産物件を組み合わせで保有するポートフォリオになりましょう。

 

ポートフォリオを組んで見る

さて、それでは、具体的な例を使って、銘柄のポートフォリオを組んで見ます。

 

なお、ここで取り上げる銘柄は、あくまで説明の都合上ピックアップしているだけで、その銘柄や、この組み合わせをお勧めしているわけでは無いことを、ご承知おき下さい。

 

ポートフォリオ構築方針としては、人により異なるでしょうが、ここの例では、基本的な方針としては、「卵を同じ籠に盛るな」を尊重し、「とにかく分散されたポートフォリオ」を考えてみることにします。

 

すなわち、基本方針として、

  • 用途の分散、地域の分散、スポンサーの分散を行う。
  • 決算月を分散し、毎月、分配金が得られるようにする。

とします。

 

「とにかく分散」と言うことで、ここでは用途別に、1つ1つ、幅広い物件や地域に投資す方針の銘柄を選んでいく、さらに、スポンサーのダブりを避けて、決算月も穴の無いようにするアプローチで考えて見ることにします。

 

数少ないヘルスケア施設系リートから1つ

なぜ、マイナーなヘルスケア施設系リートから選ぶことにしたかと言うと、それは、銘柄の選択肢がごく限られているからです。

 

用途だけ考えれば、メジャーなオフィス系から選んでも良いのですが、ここでの基本方針として、スポンサーもダブらないようにする必要がありますので、ここで先にヘルスケア施設系リートを選んでおけば、後で選ぶオフィス系や住居系リートから、そのスポンサーの銘柄を除外して、選べばよいですからね。逆に、オフィス系や住居系リートから選んで、最後に選択肢の少ないヘルスケア施設系リート銘柄を選ぶ際にスポンサーがダブれば、一からやり直しになってしまうのです。結局は、説明上の都合ですけどね。後から、全体を見直して入れ替えたりも出来ますし。

 

と言うことで、数少ないヘルスケア施設系リートの中から、地域分散という方針にも沿う、全国主要都市に物件を保有している、「日本ヘルスケア(3308)、スポンサー:大和証券G、決算期:4月/10月」をピックアップすることにします。

 

ホテル系リートからも1つ

次に、同じく銘柄数が限られているホテル系リートから1つ、ポートフォリオに組み込んみます。

 

ホテル系リートは、宿泊主体のビジネスホテルから、フルサービスのホテルや、リゾートホテルとか旅館、温泉施設など、個性豊かな銘柄が多く、1つだけ取り上げるのは惜しいのですが。

 

とりあえず、全国的にビジネスホテル、フルサービスホテルやリゾートホテルを保有している「ジャパン・ホテル・リート(8985)、スポンサー:ロックライズ他、決算期:12月」をピックアップすることにします。このジャパン・ホテル・リートは、年1回の12月決算のみとなっていて、決算月の分散という方針とは少し外れるのですが、決算月に関しては他の銘柄で補完するとしましょう。

 

旅行や温泉好きの方なら、日本ならではの旅館(星野リゾートリート)や温泉施設(大江戸温泉リート)も組み込んでみても、面白いかも知れませんね。

 

地域リートから選んでみる

用途別と言っておきながら、ここで少し違う観点で。

 

東京経済圏を対象にしたリートは沢山ありますので、それより先に、「とにかく分散、地域も分散」をより意識して、特定地域のリートを先に1つピックアップしておきます。

 

特定地域としては、九州主体の福岡リート、関西主体の阪急阪神リートなどがあります。

 

ここでは東京に対して、まずは大阪でを押さえましょうということで、「阪急阪神リート(8977)、スポンサー:阪急阪神G、決算月:5月/11月」をピックアップしてみます。

 

物流施設系リートから1つ

物流施設系リートも、優良銘柄が多く、迷うことろですが。

 

とは言え、先進的な物流施設ばかりなのが物流施設系リートの特徴って訳で、どこもよく似ているのです。でも、そんなド真ん中を外すわけには行かないですが、そんな銘柄であれば、どこをピックアップしても、参考ポートフォリオとしては同じとなりましょう。

 

そこで、今回は特にスポンサーに目を向けて見るとします。

 

外資系で、物流施設専門で世界有数の物流施設プロバイダーであるプロロジス・グループやGLPグループがスポンサーのリートが存在しますので、とにかく分散方針的に沿って、こちらにしてみましょうか。ここは、リート先進国の米国の外資系を入れておこうかな言うことで、米国系のプロロジス・グループがスポンサーの「日本プロロジスリート(3283、スポンサー:プロロジス・グループ、決算期:5月/11月」をピックアップしてみます。

 

商業施設系リートから1つ

商業施設系リートで扱う物件は、大きく郊外型商業施設と都市型商業施設分かれますが、「とにかく分散」的に幅広く拾う方針としては、その両方が含まれているのが望ましいということになります。

 

実は、商業施設特化のリートって、そんなに多くないのです。複合型や総合型で商業施設を組み込んでいることろは沢山あるのですが。

 

そこでここは、商業施設特化で、郊外型商業施設と都市型商業施設もあり、日本の各地に施設を保有する方針の「日本リテールファンド(8953)、スポンサー:三菱商事・UBS AG、決算期:2月/8月」をピックアップしてみます。

 

住居系リートから1つ

住居系リートも、住居特化型となると、それほど選択肢が多いわけではありません。

 

そんな中、幅広い住居物件に投資するということであれば、やはり、住居系としては日本最大級の「アドバンス・レジデンス(3269)、スポンサー:伊藤忠、決算期:1月/7月」をピックアップすることになりましょうか。

 

とにかく分散と言うことであれば、地方都市主体の住居特化リート、サムティ・レジデンシャルを組み込んでみても、面白いかも知れませんね。

 

オフィス系リートから1つ

用途別も、いよいよ、最後のオフィスです。

 

と、ここでも、1つだけピックアップするとなると、どうしても幅広いオフィス物件に投資している大手のオフィス特化リートの日本ビルファンドとか、ジャパンリアルエステイトとかになってしまうのですが。

 

では、ここでは、毎月、どこかの銘柄から、いくらかの分配金が得られるようにする方針を満たすために、決算月とかも、気にしてみましょうか。

 

実は、日本では通常の上場会社の決算は、3月末に偏っています。なぜ、リートでそんな話するのかと言えば、多くの投資家はJ-REITだけでなく、通常の会社の株式、特にJ-REITに投資しているような方は、配当目的の株を保有しているケースが多く、そうなると配当株の決算が3月末(中間決算が9月末)に偏るので、あえてJ-REITで3月/9月決算の銘柄をポートフォリオに入れなくても、3月/9月は配当金で賄えるから、良いって考える方も多いのです。

 

そんな訳かどうかは知りませんが、3月/9月決算のJ-REIT銘柄もそんなに選択肢はなく、無理に3月/9月決算の銘柄を選ぶ必要もないのですが、毎月決算&分配金の組み合わせポートフォリオ方針としては、ここだけ欠ける訳にいきません。そんな中、今回の大手の幅広いオフィス物件方針を叶えるジャパンリアルエステイトが、3月/9月決算ですので、オフィス特化系は、「ジャパンリアルエステイト(8952)、スポンサー:三菱地所・三井物産、決算期:3月/9月」をピックアップすることにします。

 

複合型・総合型から選んでみる

さて、こでまで用途特化別のリートを中心にピックアップしてきました。

 

J-REITには、1つの用途に特化したリートだけでなく、複数の用途に投資する複合型や総合型リートもありますので、こちらを見て行きましょう。

 

「これまで用途別に選んで組み合わせて来たから、既に総合型のポートフォリオになってるんじゃないの?」

 

はい、その通りです。その通りなのですが、複合型・総合型にも、たくさんの良い銘柄があり、それらを見ずして、素通りするのは勿体ないことです。これら複合型・総合型をポートフォリオに組み込んではいけないルールはありませんし、いや、逆に、組み込むことで、さらに「とくかく分散された」ポートフォリオになる訳です。これら複合型・総合型のリートも見てみるとこで、「全銘柄一通り目を通したことになり、全銘柄の中から選んだよね」的なポートフォリオとなると訳です。

 

複合型・総合型も、かなりの数がありますが、出来れば、用途別にピックアップした銘柄群を、補完するようなものをと。

 

ここで、ふと、これまでとりあえずピックアップしてきた銘柄を見ると、なんと、6月/12月決算銘柄がないじゃないですか。と言う、強引な理由で、6月/12月銘柄に絞って見ます。そんな中でも、やはりJ-REIT全体でも配分のオフィス比率が多いのが良いかと言うことで、また、東京だけでなく、地方都市も含め、幅広い物件に投資している「日本プライムリアルティ(8955)、スポンサー:東京建物他、決算期:6月/12月」を、複合型・総合型の中からピックアップしてみます。

 

J-REITポートフォリオ(銘柄組み合わせ)の例

さて、今までピックアップしてきた銘柄を並べると、以下のようになります。

コード 銘柄名(コード) 用途 地域 決算月 スポンサー
3308 日本ヘルスケア ヘルスケア施設 全国 4月/10月 大和証券グループ本社
8985 ジャパン・ホテル・リート ホテル 全国 12月 ロックライズ、他
8977 阪急阪神リート 総合型(商業施設中心) 関西主体 5月/11月 阪急阪神ホールディングス
3283 日本プロロジスリート 物流施設 東京経済圏主体+地方経済圏 5月/11月 プロロジス・グループ
8953 日本リテールファンド 商業施設 東京+地方都市 2月/8月 三菱商事、UBS AG
3269 アドバンス・レジデンス 住居 東京主体+地方都市 1月/7月 伊藤忠
8952 ジャパンリアルエステイト オフィス 東京主体+地方都市 3月/9月 三菱地所、三井物産
8955 日本プライムリアルティ 複合型(オフィスビル+商業施設) 東京主体+地方都市 6月/12月 東京建物、他

 

と、今回は、こんな組み合わせになりました。

 

次回は、どうなるか、分かりませんが。

 

ここからさらに、投資比率ですね。どの銘柄にどのぐらい投資しようか、それぞれ何口投資しようかという話になるのですが、このあたりは1口の株価とか計算したり、いろいろとありますので、省略させて頂きます。

 

「なんだか各用途を代表するような銘柄を並べただけじゃない?」
「優良銘柄が中心なので、利回りが低そうね。」
「三井不動産がスポンサーの銘柄が入ってないじゃない。」
「1口株価が高い銘柄があると、同じ比率で投資しようとすると、全部で合わせると凄い金額の投資になってしまうじゃない。」

 

いろいろな声が聞こえてきそうですが、ここはあくまで、ポートフォリオの組み方講座の説明都合上の1つのポートフォリオ例として、お考え下さい。

 

あなたなら、どんな、ポートフォリオを組みますか?

 

最後に繰り返しになりますが、ここでピックアップした銘柄は、あくまで説明の都合上ピックアップしているだけで、その銘柄や、この組み合わせをお勧めしているわけでは無いことを、ご承知おき下さい。