あなたは、「巡航分配金利回り」って用語を耳にしたことがあるでしょうか。
「新規上場したREIT、分配金利回り6%以上あるんだって。それって巡航?」
「巡航利回りって、よく聞くけど、何のことかなー。」
「そもそも、利回りって、どうやって計算しているの。」
ここでは、分配金と利回りに関して、いくつかトピックがありますので、見ていきましょう。
予想分配金利回りの計算式
そもそも、分配金利回りって、どう計算しているのでしょうか。
分配金利回りの計算式は、1口あたりの1年間に受け取れる分配金を、1口あたりの投資口価格(株価)で割ることにより算出されます。
1口当たりの年間分配金 ÷ 投資口価格(株価) × 100 = 分配金利回り(%)
ここで、分配金ですが、もちろん、固定ではありません。分配金は、毎回の決算で、その期間の収益から差し引いて相応に決定されるため、毎期、変動するものです。増えることもあり、減ることもあります。
では、その分配金は、いつのものでしょうか?
一般的に、J-REITで利回りと言えば、予想分配金を元に算出された、「予想分配金利回り」です。予想分配金は、各投資法人のホームページで確認できます。
J-REITは、通常年2回の決算ですから、予想分配金も2期分必要です。その場合、(今期予想分配金+次期予想分配金)とするとか、(今期予想分配金 x 2)とするかは、各情報元により異なります。
どちらが良いかは、ここでは何とも言いませんが、例えばホテル物件の場合、一部、変動賃料を採用しており、繁盛する夏休みがある7月8月を含む決算期と含まない決算期により、分配金に差異が生じたりする可能性もあります。住居系も3月4月は入退去が多い時期で影響も出るかも知れません。そのような場合は、2期分の分配金を見るべきでしょう。また、2期分とは言わず、数年間の分配金の推移はチェックすることが、重要と言えます。
(1) 今期と次期の予想を合算の場合
(今期予想分配金+次期予想分配金) ÷ 投資口価格
(2) 今期の予想を2倍の場合
(今期予想分配金 x 2) ÷ 投資口価格
(3) 年1回決算の場合
今期予想分配金 ÷ 投資口価格
年1回決算の場合の予想分配金は、1年間分の分配金予想のため、そのまま使用します。
巡航分配金利回り
さて、ここでやっと、巡航利回りの話です。
巡航分配金とは、特殊な要因を取り除いた通常運転での分配金水準のことです。
特殊な要因とは、固都税の繰延(後述)や、増資に伴う投資口発行費などです。また、巡航分配金の考え方にもよりますが、一時的な不動産等売却益や、大口テナント退去に伴う一時的な収益低下の影響等も除かれた分配金として、巡航という用語が使われたりします。
これらは、特定の決算期のみに発生するものですので、この特定の決算期の予想分配金を元に、利回りを計算すると、それは本来の通常運転の利回りではないため、注意する必要があると言うことです。
巡航利回りの話題として、よくある話としては、新規に上場するJ-REIT銘柄があって、投資しようかどうかって時に、やはり気になるは、分配金がいくらになるかです。ここでよく登場するのが「固都税(固定資産税・都市計画税の略)」で、毎年1月1日時点の固定資産保有者に課税される税金です。 詳細は省略しますが、この固都税は、取得年度には発生せずに、翌年以降に遅れて発生する費用となります。つまり、上場当初の頃の予想分配金には含まれておらず、その分配金を元に単純に利回りを皮算用すると、利回りが高く算出されますよ、と言うわけです。もちろん、これは新規上場時だけの話ではなく、物件を追加取得した場合も、当てはまりますが、かなりインパクトが大きいのが上場時と言えるでしょう。
そこで、みんな、巡行利回りって、いくらぐらいになるか、って話をするわけです。
新規上場時の話に限りませんが、目先の利回りがこれからも続くと思わずに、巡航利回りを意識するようにしましょう。
分配金の推移を見る
さて、繰り返しになりますが、J-REITの分配金は、いくら安定しているとは言え、固定ではありません。
固都税に限らず、大口のテナントが抜けた直後や、あるいは、地震で修繕費が発生したり、また、一時的な物件売却益が含まれたりと、変動するものです。
また、運用の上手い投資法人の分配金は、年々、増加していったりします。
投資法人のホームページで、成長政略として、外部成長とか内部成長とか書かれているのを目にしたことがあるでしょう。どこも同じようなことを言っていますが、外部成長として、新たに不動産を取得するなどして保有資産を拡大して、内部成長として、賃料や稼働率を上げ、費用を削減し、収益を増加させる戦略を取っています。その歌い文句通りにうまく行くかは分かりませんが、保有資産額や収益の成長(増加)に伴い、分配金も成長(増加)している投資法人も多くあります。
以下のグラフは、とある投資法人の連続増配を示したグラフです。常にこのように連続して分配金が増えるかどうかは別として、増配傾向にあるかどうかは、巡航利回りと並んで、見ておくべき重要事項の1つです。
利回りの計算式では、「分配金 ÷ 投資口価格」と書きましたが、投資口価格とは現在の価格での投資額です。ずっと以前に投資しており、その後に分配金が増加していけば、投資額に対しての利回りは、「(現在の)分配金 ÷ (当初の)投資額」となり、かなり利回りは高くなっていることでしょう。年々受け取れる分配金が少しずつ増えていく、そんな投資をしたいものです。
J-REITに投資する上では、一時的な利回りに目を奪われることなく、分配金の推移も、また、その理由も、見るようにすることが大事と言えます。